オークションの「ノークレーム・ノーリターン」には従わないとダメ?

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ヤフオクなどのネットオークションでは、洋服などの出品物に対して、「ノークレーム・ノーリターンでお願いします」などと記載されていることがある。こうした「ノークレーム・ノーリターン」に、従う必要はあるのだろうか。つまり、「ノークレーム・ノーリターン」と記載されている商品を落札した場合、どんなシミがあっても破れがあっても、返品を求めることはできないのだろうか。

ネットオークションの「返品」には2種類がある

この問題について考えるには、まず前提として、「ネットオークションにおける『返品』って法律的にはどういう意味?」ということに触れないといけない。実は、法律的に考えると、オークションにおける「返品」には、以下の二種類があるのだ。

(A)商品に欠陥があることを理由に「返品」を求める
(B)特に欠陥などはないが「返品」を求める(訪問販売のクーリングオフと同様の制度で、8日以内なら返品ができるというもの)

「ノークレーム・ノーリターン」表記は、「(B)を認めない」という意味では、完全に効力を持つ。つまり、「ノークレーム・ノーリターン」表記がある場合には、落札直後であっても、相手の同意なしに「ごめんなさい気が変わりました」を認めて貰うことはできない。
……ただ、(B)の制度は、存在自体、知っている人が少ないかもしれない。

シミや破れなどの欠陥があっても返品できないの?

問題なのは、(A)の返品との関係だ。
そしてこれは、当該商品の出品者が「事業者」の場合と、その他個人の場合で異なる。
ここでいう「事業者」とは、会社や個人商店などのこと。リアル店舗を持っている古着屋が出品している場合はもちろん、「洋服を仕入れてヤフオクで出品する」ということを繰り返し行っている個人も「事業者」だ。一つの目印としては、商品出品ページ内に「特定商取引法に基づく表示」といった記載がある人は「事業者」である可能性が高い。

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出品者が「事業者」の場合と個人の場合

出品者が事業者の場合、「ノークレーム・ノーリターン」に従う必要はない。説明に書いていない重大なシミなどがあったら、返品を求めてOKだ。
出品者が個人の場合、「ノークレーム・ノーリターン」には、基本的に従う必要がある。つまり、届いた商品が自分の思うような状態でなくても、基本的に文句を言うことはできない。ただ、「背中に一目で分かるシミがあるのに一切触れず、正面からの写真のみを掲載する」など、詐欺的な出品に対しては、「シミがあることを知っていたら落札しなかった」と主張し、返品を求められる場合もある。

(執筆:河瀬季 / 監修:ニシムラミカ)

法務博士 河瀬季

法務博士 河瀬季

著作権法、商標法などの知的財産法分野や企業法務を得意とする、元IT関連フリーランスの法務博士。「ビジネス+IT」での連載「法律が分かる起業物語」など各種企業運営サイトへの寄稿や、新興企業への法務アドバイスなどを行っている。